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奇想天外なストーリーとカメラワークでアカデミー賞®4部門を受賞した『哀れなるものたち』のヨルゴス・ランティモス監督とスタッフが集結した作品。さっそく観てきました!
映画は邦題通り3パートに分かれています。「夫婦の性生活に至るまでの全てを上司に決定され、それに従うことで上司への愛を証明しようとする男」「海難事故から生還した妻は別人だ、と恐れるあまり精神のバランスを崩していく警官」「カルト宗教団体に傾倒し、教祖となる奇跡的な能力を持つ人物を懸命に探す女」……あらすじだけでも濃い!
そして実際の展開も、個性的という言葉が生ぬるいほどクセの強い、「なんじゃこりゃ」とあ然とするキャラクターが、予測不能な行動で度肝を抜きます。どうやったらこんな物語を考え付くのかと、監督の頭の中をのぞいてみたくなりました。
この3パートの別々の登場人物を同じキャストが演じ分けていることで、物語が緩やかにつながっていきます。役者たちは、1作品の中で3つの役を演じつつ、同じ世界観を表現する……かなり高度な演技が必要。しかし、『哀れなるものたち』に続き、監督とのコラボレーションが継続するオスカー俳優エマ・ストーンをはじめ、実力のある俳優陣がさすがの熱演! 驚異的なモチベーションを持続して演じ切っています。
「この物語は人間の条件と行動についての全てだ。アイデンティティ、支配、帰属意識、自由への欲求についてである」と監督は語っています。原題はkinds of kindness=優しさの種類。興味深いですね。登場人物たちの「優しさ」――家族や周囲、そして何より自分自身に向けて――が到達する残酷な結論に圧倒される、大人のための幻想奇譚。R15+だけあり、なかなかハードな場面もありますので、心してご覧ください!
●『憐れみの3章』
https://www.searchlightpictures.jp/movies/kindsofkindness
執筆者:本間千英子
新潟市出身。大学で映画脚本を学び、卒業後は東京でほんの少し邦画制作と宣伝に携わりました。幼少時から映画、ドラマ、演劇、本などを支えに生きる還暦フリーライターです。ここではエンタメ全般のオススメ作品と旬の話題もご紹介します!
独特の変なファッションセンスで闊歩する姿は、大阪のおばちゃんをも凌駕する。初対面でも平気なのもしかり。花、酒と犬猫をこよなく愛でる。大好きな唐揚げ取材から始まったライター暦は16年。
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