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旅と食とおしゃれと。
旅はいいよね。
日常をポンと離れて、いろんな人や景色に出合う旅は、気持ちを変えてくれるだけじゃなく、それまでの自分を変えてくれる、人生の転機になることもある。
誰かと行くのもいいけれど、憧れは「ひとり旅」。Bon Vivantでも、会員の皆さんとおひとり同士で行く旅を作れたらいいなあ、と思っています。
この「旅に出ましょう」は、そんな旅の目的地を探す旅。
目次
旅の達人たちが「絶対に行くべきだ」と口を揃えて言うラオス。
ラオスってどこにあるの?という人も多いけれど、昔から「バッグパッカーの聖地」「東南アジア最後の秘境」として有名で、ニューヨーク・タイムズの「世界で一番行きたい国」第1位に選ばれたこともある。
でも残念ながら、日本からラオスへの直行便は、まだない。
なのに今年、新潟空港から上海経由でラオスへ行く全国でも珍しいツアーがあるという。こんな機会は絶対逃せない! しかも目的地はラオス北部の古都・ルアンパバーン。
ルアンパバーンは、14世紀以降、現在のラオスの基礎となるランサーン王国の都として栄えた町。特にメコン川と支流・ナムカーン川の合流点にある、出島のような旧市街地には、至るところに歴史ある寺院やフランス統治時代の美しい建造物が残っている。
1995年には、この旧市街全体がユネスコ文化遺産に登録されている。
「最後の秘境」などと聞くと、どうしてもワイルドな田舎を思い浮かべてしまうけれど、コロニアル調の歴史建築が残る世界遺産の旧市街は、風情があって美しく、そしてのどか。また少し足をのばせば、息を飲むようなラオスの美しい自然にも出合える。
行ってみて、思った。
旅の達人たちが「絶対に一度行くべきだよ」というのは、本当です。
新潟からラオスへは中国東方航空の上海浦東空港経由で行く。新潟空港を14時に出発し、夕方に上海浦東空港着。そこからラオスのビエンチャン空港までは約3時間のフライト。上海浦東空港内で免税店やコーヒーを楽しむ時間もあるので、移動のストレスもほとんどない。
ビエンチャンからルアンパバーンへは昨年、新幹線が開通。以前は陸路で8時間かかったそうだが、わずか2時間で行けるようになった。
新幹線に乗れるのも、今回のツアーの楽しみのひとつだと思う。
ルアンパバーンに着いて、まず向かったのは「クワンシーの滝」。ここは世界有数の楽園といわれる、ラオスの美しい自然を象徴するようなところだ。
正式には「タット・クワンシーの滝」といい、ここには賢い老人が地面を掘ったところ水が出て、その水が滝となり、滝に突き出た大きな岩の下には金色の鹿が住みついたという伝説がある。「Tat(タット)」は滝、「Kuang(クワン)」は鹿、「Si(シー)」は掘るという意味で、滝の名はこの伝説に由来している。
滝へ向かう遊歩道の途中には、違法に狩猟された熊を自然に戻すための保護区や蝶の博物館もあるけれど、「蝶は森の中でたくさん見ることができるから」とガイドさん。
そして、森の中を進んでいくと息を飲むようなエメラルドグリーンが現れる。
いくつも段差を織りなす乳白色の石灰華に、穏やかに流れるエメラルド色の水。まるで、クロアチアのプリトヴィツェ国立公園を思わせるような美しさだ。
さらに先へと進むと、穏やかな美しい滝。
豊かで穏やかな水の流れ、美しい木漏れ日と小鳥のさえずり。森の中を歩いていると、後を追うかのようにさまざまな美しい蝶があとを付いてくる。
ここは、本当の楽園だと思った。
ルアンパバーンに来たら、必ず行きたいのが旧市街地の中心にある「プーシーの丘」。
ここは夕日に染まるメコン川を眺める世界屈指のサンセットスポット。かつて2人の仙人が、神の導きによりたどり着き、ルアンパバーンの町を造ったという伝説から「仙人(ルーシー)の山(プー)」と名づけられたという。
国立博物館のすぐ前にある入り口から丘の上へのぼっていくが、これが意外にきつい。高さ150mほどの丘なのに、実は海抜は700m。やっと登った丘の上は意外に小さいが、けれどそこには世界中から訪れた人たちがメコン川に沈む夕日を待っていた。
プーシーの丘を降りると、旧市街ではナイトマーケットが始まっていた。ラオスは織物の宝庫。手織りの布や、少数民族の刺繍などの工芸品も驚くほど安い。物価の安さもルアンパバーンの魅力だ。
ナイトマーケット以外にも、豊かな地元の食材が並ぶモーニングマーケットや地元の人たち御用達のディープな市場もある。
お土産を買ったり、屋台で買い食いがとにかく楽しいのだ。
そして、ルアンパバーンを訪れて驚いたのが洗練されたカフェが多いこと。世界遺産の市街地は歴史ある建物がそのままカフェやビストロになっている。欧米人に人気の観光地だけにベーカリーまであり、しかも料理もコーヒーも、とにかくおいしい。
特におすすめしたいのが、夜の散歩。
フランス植民地時代の香りが残る通り沿いには、歴史建築のカフェや雰囲気ある宿が並び、ほのかな灯りの下、コロニアル調のテラスで、冷えたビールと食事をゆっくりと楽しむ欧米人観光客の姿が本当に多い。
できれば何日も滞在して、いろんなカフェやビストロをめぐりたいと思うほど。
「バッグパッカーの聖地ということは治安がいいということ」。
そう誰かが言っていたが、確かにこの町はどこかのどかで、夜にひとり散歩も安心してできる。
歩き疲れて入ったラオスマッサージの店では、スマホを忘れると、店の人が走って持ってきてくれた。
仏教の教えが隅々まで行き届いたルアンパバーンの町は、なにより『人』がとても優しいのです。
ルアンパバーンといえば、忘れてならないのが、旧市街で行われる早朝の托鉢。托鉢はラオスに暮らす仏教徒が何十年にも渡って受け継いできた伝統的な宗教儀礼だ。
ルアンパバーンの托鉢は、東南アジア最大の規模といわれ、毎朝200人以上の僧侶の列に地元の人々がひざまずき、主食である餅米やお菓子などの喜捨をする。
「喜捨」とは文字通り「喜んで捨てる」という修行。喜捨することで徳を積むことになるのだという。
夜明け前から通りに座り、朝靄の古い町並みに鮮やかなオレンジの袈裟姿の僧侶の列が現れる光景は荘厳の一言。地元の人に交じって体験する托鉢は、本当に得がたい経験と思う。
旧市街地全体が世界文化遺産に登録されているルアンパバーンは、ラオス人の仏教信仰の中心地。そのため、ラオスを代表する多くの美しい寺院が数多くある。
どこもルアンパバーン独特の美しい建築様式。仏像も非常に美しいので、寺院巡りも楽しい。
●ワット・シェントーン
ラオスで最も格式が高い寺院。出島のような地形のルアンパバーンの突端に建つ1560年のラーンサーン王朝時代の建築で、ルアンパバーン様式といわれるせり出した何層にも重なる屋根が美しい。ラオス随一の美しい寺院ともいわれている。
●ワット・マイ
ルアンパバーン国立博物館に隣接する寺院。1788年に建築が始まり、完成まで70年かかったという。4層の屋根をもつ典型的なルアンパバーン様式の寺院で、ラオスの仏教芸術最盛期を彷彿させる絢爛さ。本堂の正面扉にはヒンドゥーの古典叙事詩・ラーマーヤナ伝説の黄金のレリーフが彫られている。
寺院巡りのほかにも、郊外のエレファントキャンプでゾウたちに出合い、ラオスの伝統的な米焼酎「ラオ・ラーオ」の酒造りで知られる小さな村を訪れて地元の人たちとのふれあいも楽しかった。
出発前、世界中を巡った商社の人に言われた。
「ルアンパバーンは素晴らしい町ですよ。料理はベトナムとタイ、フレンチの良いところ取りだし、ラオスビールは東南アジアで一番おいしい。なによりも「人」がいい。一度行くとまたもう一度、きっと行きたくなるはずですよ」。
その言葉は、確かに本当だった。
◎取材記事/撮影 間仁田眞澄
編集プロダクション株式会社プレッセプレッセ代表。企画編集、取材、ライター業、書籍に広告なんでもやる「サメ」。シングルマザーで独立し、編集集団プレッセプレッセを設立。元・月刊キャレル編集長。
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